松風トークvol.1「モノが残る理由。」アンティークショップmenu店主、石井裕人さん

インタビュー

松風トークvol.1「モノが残る理由。」アンティークショップmenu店主、石井裕人さん

2022.02.14

松風ストリートでお店を営んでいる人や、近辺の気になる方々にお話しを聞いて記事にする企画、『松風トーク』。
トップバッターはアンティークショップmenu店主である石井裕人さん。

menuは、松風を散歩しながらふらっと立ち寄るのにちょうど良いお店。
アンティークショップですが、カフェでもあり、カウンターでコーヒーを淹れてもらえます。(意外と知らない方も多いかもしれません)

普段からお世話になっている石井さんに、松風ストリート編集部の勝股が、改めてお店の話(人生の話)を伺ってみました。

 

非提案型のお店、アンティークショップmenuができるまで

-改めてではありますが、ここのお店をはじめた経緯から伺いたいです。石井さんは平塚出身でしたっけ?

うん。平塚生まれ平塚育ちです。
僕が小さい頃は平塚はすごく活気があってね、七夕祭りもすごい賑わいで、駅ビルや百貨店にも大勢の人が買い物に来ていてね、平塚がすごく盛り上がっていた時代でした。
同級生にはサーフィンやるやつも、暴走族になるやつもいたけど、僕はバンド少年で。

小学4年生の頃かな。姉からビートルズのカセットテープをもらって、そこで洋楽に目覚めちゃって、友達とギターを習いだして、ベースをして、バンドやって。the80年代のカルチャーにどっぷりという感じだったね。MTVとかBest hit USAとかね。だから当時はアメリカのカルチャーにハマっていたんだよね。すごく楽しかった。

-学生時代はイギリスではなく、アメリカンカルチャー。
※menuで扱っているアンティークの買い付け先はほとんどがイギリスです。

そうそう。
で、そんな風に過ごしていたらいつの間にか高校卒業しててね、
1年くらいアルバイト生活してたら、ある日、姉が
「家具屋でバイトしないか?」って。

それが横浜のKIYA ANTIQUEってお店で、当時バブルですごくアンティーク家具が売れていた時代で、力仕事をする人が欲しかったみたいでね。
で、行くと1日1万円くれるみたいな。
毎日行ってたら、社長が「お前に毎日バイト代払うの大変だから社員にする!」とか言われて(笑)、そのままそこでお世話になって、そこで10年働きました。
もちろん最初はアンティークのアの字も知らないから、働きながら少しずつアンティークのことを知っていって。10年、仕入れや、接客、配達、修理まで本当にいろんな経験をさせてもらいました。

10年働いて気づいたら30歳になっていて、ちょうど別の仕事もしてみたいと思っていた時期に、今度は知り合いの建築家から
「カフェで店長しないか?」って誘われて。
それで下北沢に新しくオープンするお店の店長をやることになって、そこで7年間。
ワッフルを出すカフェでね。あれも楽しかったなぁ。

-そこでワッフルを美味しく焼く技術を身に付けたんですね。
※2021年春にmenuは期間限定でワッフル屋さんを展開しました。

うん。そうそう。
で、家具屋とカフェで17年働き続けて、プライベートでもちょっとしたことがあったタイミングでカフェを辞めて、そこから1年くらいはゆっくりしてた。
そしたら今度はイギリスに移住した友人から連絡が来て。

節目でちょうどよく連絡がくる。(笑)

そうなのそうなの。
で、「何してんの?」って。
「何もしてないよ」とか言って。(笑)
「イギリスに遊びに来ないか?」って誘ってもらって。
それで、1ヶ月くらいイギリスで友人の家のペンキ塗ったり引越しの手伝いしてたらなんかけっこうリフレッシュして日本に帰ってこれて、何かはじめようって気になったのね。
それで改めて自分に何ができるだろう?って考えたら、
やっぱりやってきたこと、好きな家具やアンティークを紹介することと、お茶やお菓子を出すことかなって。
そんなこと考えてたら、ここの物件情報が出てね。
いいぞここ。じゃあいっちゃうか。と、はじめたのが2008年。

-14年前なんですね。

僕、自分で決めたことってここを始めることぐらいで。
誘われて誘われてそっちに行く人生だったんだけどね。
まぁでもどうにか自分が食えればいいと思ってここをはじめたんです。
本当にダメなら早朝コンビニバイトしてから夕方にお店あければいいやって思ってました。
でもありがたいことに、お店を続けることができていて、本当にお客さんに感謝しています。

-お店を続けていて、特に嬉しい瞬間ってどんなときですか?

僕は、紹介するのがすごく楽しいというか、お客さんに言われて一番嬉しいのは、「よく見つけてきてくれたね」って言葉なんですよ。

インテリアショップの多くはライフスタイルや空間の提案をしているでしょ?こういうライフスタイルのために、この家具、この食器はいかがでしょう?って。
うちは逆で、僕はものを見つけるだけなんです。
用途はお客さんが考えてくれるというか。
うちのお客さんは上級者が多いので、「こんなふうに使ってみました。」って教えてくれたりする。それがまた素晴らしくて。
なので、うちは非提案型ですかね。

-何型っていうんでしょう

なんだろう。蚤の市スタイルなんて言う人もいるけど。

-あぁ確かにmenuに来る時は、目当てのものをただ買いに来るというより、探索しに来る感じがあるかもしれないです。掘りに来るというか。

うん。そんな感じかもしれないね。
ネットの普及で、全国で一番安いところを見つけて、目当てのものを買うという購買スタイルもあれば、うちのように何か見つけにくる場所もある。

 

モノが残る理由



-石井さんの思う、古いものの魅力ってなんでしょう?

あぁ。それはとっても大事なことだね。
僕は、ものには残る理由があると思ってます。
新品を買ってきて、飽きられたり壊れたり、捨てられたり、何十年ものふるいにかけられて、それでも残っているモノには理由があると思うんですよ。
一番大事なのは作りの良さで、壊れるとやっぱり捨てられてしまうでしょ?やかんひとつとっても火にあたって50年、60年って結構過酷な環境だからね。だから現存する古いやかんはえらいです。残るものって全体的に少しオーバークオリティに作ってあることが多い。

あとは単純に美しさ。美しいから残るっていうのもあると思います。
僕は絶対値(美しいバランス)や不変なものっていうのがあると思うんです。
何故か人間がちょうど良いって思ってしまう比率みたいなものかな。
例えば、ボーダー柄ってだけなら沢山あるし、それこそ100円ショップにもあると思う。
でもやっぱりどこかコーニッシュウェアに惹かれてしまうのはバランスの絶妙さ、絶対的なバランスの良さなんじゃないかと思います。
※コーニッシュウエア

僕には職人的技術があるわけでもないし、デザインの大学に行ったわけでもないけど19歳の頃からそれなりに沢山のモノを見てきて、誰かが作ったものを直感的に良いと思ったり、違和感があったり、それってなんだろう?って考えると、やっぱり黄金比みたいなものがあるんだと思ってます。

-石井さんの頭の中のビッグデータですね。

たくさん見てるからね。

 

-最後に、今後やりたいことがあれば教えて下さい。

お店の継続かな。「あそこ、ずっとあるよね。」「まだやってるんだ。」って思ってもらえるようなお店になりたいなー。やっぱ街に小さいお店がないとつまんないんじゃない。あとは、欲を言えば年に一回、家族旅行ですかね(笑)

 

インタビューを終えて

非提案型のお店も、石井さんの生き方もなんだか重なるように聞こえた。
少なくとも、”目的にあわせて最短距離を走ること”を考えているわけではなさそうで、行き会ったものとの縁を大事にしているようだ。

”選ぶことよりも、どう関係性を作っていくかのほうが大事”ということになるんだろうか。
選択に良し悪しもあるだろうけど、そのあとの関係の持ち方、育み方を大切に、いや楽しんでいるように見える。

これは、暮らし方の話にも重なるところがある。
ご近所さんや、街のお店や人たちは、当然だが個人が全てを選ぶなんてことはできず、そこにいる人たちや物事と関わってゆくことになる。(または、全く関与せず生きていくこともできるのかもしれないけれど)
暮らしをつくることは、行き会った人たちとどんな関係を作るか?にかかっていると言ってもいいかもしれない。

幅広い選択肢の中で、自分の意にそぐわないものは選ばない。「自分が選んだもの以外と関わらなければ、幸福を最大化できる。」という考えにはどこか安心感がない。

私たち松風ストリート編集部も、この通りで出逢ったものとの関係、成り行きを楽しいものしてみたいと、改めて思う。

そんなわけで?、アンティークショップmenuには素敵な出逢いが転がっているかもしれません。未訪の方も、常連の方も、ぜひ散策しに、石井さんと話しに、出かけてみて下さい。


【お店情報】
アンティークショップmenu
https://www.menu2008.com/

instagram
https://www.instagram.com/menu2008/

 

筆者:勝股淳

 

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