【編集部、旅へ行く】vol.1 北海道美瑛町朗根内 |ただ生きることは美しい。

エッセイ

【編集部、旅へ行く】vol.1 北海道美瑛町朗根内 |ただ生きることは美しい。

2022.06.11

松風ストリート編集部メンバーが、どこか気になる土地や空間を訪れて感じたものを書き記していく企画『編集部、旅へ行く』。

企画の発端は、編集部メンバーが色んな場所を訪れる機会が最近増えてきたこと。
自分がいる土地を離れ、実際にその場所に身を置いたからこそ味わえたことを読者のみなさんと共有できればなと思っています。

第1弾は「美瑛町朗根内」。
編集部のテルがお届けします。

退職したら絶好の機会が目の前に転がってきた。

3月下旬〜5月上旬の1ヶ月半ほど、わたしは平塚を離れ北の大地へ滞在していました。
そのエリアは、住所に番地が用意されていないほどの田舎町、北海道の「美瑛町朗根内」。

朗根内は北海道のど真ん中に位置します

朗根内を訪れたきっかけは、昨冬シーズンにオープンした宿「RONENAI BASE.(ロウネナイベース)」で住み込みスタッフとしての採用が決まったことでした。
InstagramでRONENAI BASE. のアカウントをフォローしていたわたしは、時折アップされている写真から暮らしぶりを覗き、”いつかあそこで生活してみたい!”と思っていました。
その矢先、ゴールデンウィークまでの期間限定スタッフの募集があったのです。

 

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三角屋根がステキな宿です。ぜひ遊びに行ってください。

 

大自然をいつも欲してしまう性分の自分にとっては、願ってもない機会。
2月末に退職し週5で働くサラリーマン生活を終えていたこともあり、フットワーク軽く応募してしまったのですが、有難いご縁のおかげさまで、とんとん拍子で住み込みで働くことが決まりました。

平塚に戻ってきたいま振り返ってみても、
そこでの暮らしぶりは今後一生自分に残り続けるものになった、と確信しています。

身体が喜んでいることに気づくこと

「自然に触れると生き返る。」という言葉をよく聞きます。
その言葉ではとても表現し尽くせないほどの体験が朗根内にはたくさんありました。

– 広大な大地の見える先には、美しく冠雪した旭岳が見守ってくれていて身体がなぜか安心すること。

– 山の色、鳥の動き、田畑の風景から季節の移ろいを感じられること。

– 蛇口からは、大雪山から地下へ染み込んだ伏流水が流れてくること。
飲めば身体が喜んでいるのがわかるほどに美味しいこと。

– 出所のわからない食材ではなく、選び抜いた北海道産の食材をいただくこと。
薪ストーブでじっくり調理すること。その食生活の積み重なりは、これまた身体がなぜか元気になること。

– 心を注ぎ込んで焚いた薪風呂/サウナが、生まれ変わった感覚になるくらい気持ちよかったこと。

自然に生かされているということを感じさせられる幸せな時間を過ごしました。

そんなひと時を過ごした宿のお客さまもみな、とてもスッキリとした表情で翌朝を迎えられていたことをよく覚えています。

一泊という短い間にも、その恵みが人間の身体にダイレクトに届く姿を目の当たりにしていると、自ずと自分の普段の生活はどうだったっけ?と省みてしまいます。

自分の身体がどう喜びを感じているか目を向けられていただろうかー
その土地にある美しさを享受しにいく姿勢を持てていただろうかー

ただ生きること。

雪国での暮らしでは、季節に合わせてやるべきことがありました。

わたしが滞在中は雪解けの頃で、来冬に向けて薪割りをする時分。
天候が良い日には裏庭で、斧を振り続ける日々を過ごしました。

薪になる前の原木。トラック一台分(10t弱)割りました。

来シーズンのための準備しながらも、去年備えておいた乾いた薪を使って暖を取り、料理をして、お風呂を焚くという生活リズム。
特に目新しいことはないものの、自然のリズムに合わせて所作を繰り返すというライフスタイルです。

天候に合わせたり、樹木の水分量に合わせたり。どのように自分たちが動くかは、否が応でも自然と調和する必要がありました。

会社員時代、いわゆる”仕事”をしていると社会の一員になれた気がして充足感を味わえることがありました。人間は社会的な生き物だなと感じる素敵な瞬間です。

でもそれ以上に、自然のリズムで生きると、社会という枠を超えて人間が自然のサイクルの一部であると知らされます。
“自分よりもっと大きな何か”と調和する。そのサイクルに身を置くと、何故か、ただ生きることが許された気持ちになりました。

“山の木々は、ただ生きるだけで虫や鳥の住処になり、人間のために生きているわけでもないけど、いま目の前で薪という形で役に立ってくれている。
旭岳の雪も、自分たちのために溶けて伏流水としてここまで汲み上げられているわけではないものの、こうやって身体を潤してくれている。
それらは自然のサイクルの中で、ただ自分の生命を全うすることで結果的に、周りを助け、利他的な存在になってくれている。ただ生きるということは、なんて美しいことか。 “

そんな思いが何故か心に残りました。
Life is beautiful. という言葉はどこでも聞くので改めて言うのはこっ恥ずかしいですが、
その言葉通り、Life(人生も、命そのものも)は美しいなと。
どんな命も人生も優劣なく尊いなと、いま思っています。

その場所で”本当に”暮らすということ

ここまで、旅行記というよりは自然と対峙したエッセイみたいになってしまいました。
最後に、平塚までの帰り道でぼんやり考えてた「よりよい暮らし」について少し。

美瑛町朗根内を離れ関東に近づくにつれ、車窓から見える景色はだんだん同じような建物ばかりに感じられました。

ベッドタウンなど郊外を眺めているとよく感じることですが、
商業化が働きすぎると大手企業によるチェーン店や価格力のあるお店が並び、どうしても味気ない町並みになってしまう気がしています。

それは便利かもしれないけど、豊かに感じられない。

そんなに、なにか安いもの/便利なもの/新しいものって必要だったっけ?
だったら「その土地ならではの暮らし」を全うすることが、よりよい暮らしに繋がっていくんじゃないか。
大自然から色んなものを受け取った今では、そう感じています。

高尚なものじゃなくても、お金がちゃんと生まれるものじゃなくても、
既にそこにある美しいものを育んでいけば、いつか豊かな形で萌芽するんじゃないかなと信じて、今後も松風ストリート編集部、活動していきます。

筆者:テル

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