松風トークvol.6 努力の秘訣は「楽しさ」と「心地よさ」〜 akihama 秋濱克大さん 〜

インタビュー

松風トークvol.6 努力の秘訣は「楽しさ」と「心地よさ」〜 akihama 秋濱克大さん 〜

2022.07.13

松風ストリートでお店を営んでいる人や、近辺の気になる方々にお話を聞いて記事にする企画、『松風トーク』。
第6回のゲストは彫金師の秋濱 克大(あきはま かつひろ)さん。
秋濱さんのブランド「akihama」では、羽をメインモチーフとしてジュエリーからオブジェまで制作されています。

海風が心地よく抜けるアトリエ兼ご自宅で、秋濱さんのキャリアやライフスタイルについて伺ってきました。

幼少期から、夢中になることで扉が開いていった

ーまずは彫金を始めた経緯を教えていただけますか?
藝大の工芸科に入学して、そのときは工芸科って何科があるかもわからないくらい全くわからず、とにかく受かったから入りました。

入学したら工芸の中にいっぱい講座があって、染色、漆、陶芸、金工とか。で、金工の中の1つとして彫金があった。
「どさ回り」っていうんだけど、ひと月にひと講座ずつ課題をもらって、全部やるの。そうやって課題や先生との相性とか、空気感とかを見ていく。

彫金は女性の先輩がいっぱいいて、先生もちょっとかっこいい感じの雰囲気で、「ここ俺かな〜」みたいな、「俺に合ってるぞ」みたいな軽い気持ちで決めちゃった。(笑)

ーそもそも、なんで藝大に行きたいって思ったんですか?
もっとさかのぼっていいの?

ー長くなります?(笑)
長くなる。(笑)
小学校の頃はスポーツも勉強もまあまあできるタイプで、苦労なくチヤホヤされた人生を歩んでたんだけど、中学に入って、目的とかモチベーションがなくなっちゃって。「何のためにこんなことやらなきゃいけないんだろう」ってモヤモヤし始めちゃったんだよね。で、行きたくもない高校に入って、さらにやる気がなくなってどうしようもなくなっちゃった。

母親が見るに見かねて「あなた絵が上手かったじゃない」って、大磯にある画塾に連れて行かれたの。最初は全然興味なかった。その時のやる気のなさと態度の悪さはいまだに先生に言われるね!(笑)

まあとにかくやってみることになって、最初は木炭デッサンって言って、木の炭で石膏像を描くんだけど、こんな太くて粉っぽい木の炭でどうやって描くの?って思ってたら、1つか2つ上の先輩ですごい上手な人がいて、同じ道具で写真みたいにめちゃくちゃ上手に描いてるわけよ。「凄ぇ!」と思って、そこで初めて興味持っちゃって。で、やり始めたら夢中になるから、凄いスピードで上手くなっていくんですよ、僕は。(笑)

そこで、先生が「秋濱くん、美大受けるのか?」って聞くの。美術で大学に行けるってそこで初めて知って、「じゃあ、受けます」って。

計画性が本当にいつもないんだよね。(笑)
でもやってることに夢中になると、こう扉が開いていくみたいな感じ。

時代の移り変わりの中で出会ったのが“羽”

ーそんな秋濱さんですが、なぜそこで“羽”を選ぶことになったんでしょう?
最初、助手をやっていた頃は抽象的な彫刻をやってたんですよ。だけど、バブル崩壊で時代の潮目が変わっちゃって、抽象的な作品が売れなくなっちゃった。同時期に大学助手の任期が終わって、家で作ることになったの。家の設備でできる技術と言ったら”彫り”だったから、何を彫ろうと考えて、モチーフをずっと探して悩んでた時に、羽と出会うんだよね。

羽のシルバーアクセサリーって、ネイティブアメリカンとか、モチーフとしては昔からあるものなんだけど、繊細さに欠けるというか。それを和彫で細かく表現すると、全然違うものになるってある時気がついて、新鮮だと感じた。

羽を彫ると決めて、コンペに大きな羽のバングルを作って出したら、優秀賞をもらって。その時に「自分のモチーフ見つけた」っていう確信になった。それが十数年前。せっかくチャンスを掴んだんだから、「羽といえば秋濱」と言われるくらいまでやろうと決めたんだよね。

でもそう思っても、人ってなかなか続かないじゃん。俺も続けられないタイプだし。
でもこれに関しては続くんだよね、不思議なことに。

ーへぇ!何が違ったんだと思います?
わからない!(笑)でもアイデアが沸くっていうのはあるね。
羽としていろんな表現ができるから、感情的なものだったりとか、ポジティブな感情表現も、ネガティブな感情表現もできる。カワイイものも、カッコイイものもできる。

自分でその表現の幅をつくれるのと、素材を変えたらその表情がどうなるか、そういったマイナーチェンジのアイデアがすぐ出てくる。そんなふうに楽しく続けていたら、気がつくとこんなに時が経っていた。

もう一つの理由は、まだ会心の出来がないことかもしれない。だからまだやらなきゃいけない。まだモヤっとしちゃうんだよね。世界に出して評価されていないから、そっちに挑戦していきたい気持ちもあるね。まだまだやり足りないです。

弟子を迎えてから世界が広がっていった

ー彫金一筋の秋濱さん、これまでを振り返って、変わったところ・変わらないところは?
彫金は一筋っちゃ一筋なんだけど、収入源としては、ずっと「教える業」が主たるものだったんだよね。専門学校やカルチャー教室をたくさん掛け持ちしながら教えていました。それが一巡しちゃって、教えることに魅力を感じなくなってきた頃に、作品が売れ始めたんだよね。

それで講師を辞めて自分の作品を作ることに集中しようと思って。そしたらさらに売れるようになった。そうしてこの数年、作家として作品を作ることで回っていきました。

でもやっぱり俺、教える業は自分に合っているし、好きなんだよね。人が成長していくのを見るのが好きだから。あとは諏訪ちゃん(秋濱さんの彫金の弟子)の存在が大きいね。自分一人で作るのと、諏訪ちゃんがいるのとでは全然違う。ひとりで作るのと、誰かがいるところで作るのとでは、緊張感なんかも違うからね。

今後、諏訪ちゃんがどういう風に成長していくか、どういう風に絡んでいけるかがすごい楽しみだね。自分一人じゃないということが今いちばん面白く感じるかな。自分の作品に弟子が絡んでくれるようになったら、大作の密度が上がってくる。今まで越えられなかった一線が越えられるって思うと、ちょっと凄いことになるんじゃないのって思うね。(笑)

ー環境面では常に変化しているようですね。彫金に対するご自身のスタンスの変化はどうですか?
絶対に変わっていると思う。
昔は「面倒くさい」とか「あの技術は難しいからやめておこう」とかで避けてきたことを、
今では技術も身に付いて普通にするするっと進められるから、RPGゲームに例えると経験値が上がって、いろんな装備とか身につけて、基本的にどこでも入れちゃう、みたいな感じ。

彫金が自分にとってしっくりくる状態で今立っていられるから、今が本当にやりどきなんだと思います。
ここから最後、10年くらいがいちばん気合いの入った大作が作れるはず。きっと諏訪ちゃんはそのために来たんだと思う。

やっと機が熟した感じ。あとは俺のやる気の問題だね。(笑)

自由に、心地よく、波とともに暮らしていく。

ーとにかくライフスタイルが素敵な秋濱さん。大切にしていることは?
大切にしていることは、とにかくストレスを抱えないで、気持ちよく暮らす、くらいかな。暴飲暴食みたいな不快なことはしないし、心地よくないことはしないんだよね。人間関係でも、何でも。

やめる時って勇気が要るけど、やめることを優先したほうが結局はいいんだってことに気がついて、リセットを何回かしてきて、今の状況になったかな。

もともと楽天家だから、もちろん落ち込んでいる時もあるけど、長続きしないんだよね。(笑)嫌われたりするのが怖い気持ちもあったりするけど、その怖さを背負って自由に生きていくことを良しとしています。

あとはサーフィン。
生活のうちの一部になっていて、サーフィンがないと俺の人生成り立たないくらい。「彫金」と「サーフィン」はイコールに近い。

彫金は社会と関係性を持つためのひとつのツールで、そこで収入や名声を得る。サーフィンはまったく自分だけの楽しみなんだけど、自分の人生を豊かにしてくれるし、とにかく元気になるんだよね。怪我もするし、恐怖もけっこうあるんだけど、波に巻かれて死にそうになった時に、同時に「生きてる!」って生を感じる。海に入るようになって、日常的に生への喜びを感じるようになりました。

年に数本いい波に乗れたりすると、単純にめちゃくちゃ嬉しかったり、自分の成長を感じられたり。自分にとってサーフィンは挑戦し続けられるものだね。そう思うと石膏像をデッサンしていた時の自分と似ているかも。絶対もっといけるって思ってるから。

ーこれからやってみたいことは何でしょう?
キャンピングカーにサーフボード積んで日本中のいい波を求めて旅がしたい。海外の波にもチャレンジしてみたいね。羽の作品も積んで、旅しながら販売したりとか、そういうことができたら面白いかな。

仕事のビジョンだと、工房制になって弟子が入って、今までやったことがないレベルの作品をつくって、それを世界に持っていきたいんだよね。ケタが違うような、そういう世界にチャレンジしていきたい。

今年の秋に日本神話がコンセプトのファッションショーがあって、それに向けて大きなコスチュームジュエリーを作ることが決まったんだけど、その仕事を自分にとっての新しいスタートにしたいと思ってて。
そこから次の仕事に繋がっていくといいね。

ーこの記事を読んでくれた方がアトリエの見学に来てもいいですか?
もしもアトリエ見学してみたい!という方、大歓迎です!
不在の場合もあるので、事前にInstagramFacebookにDMください。

今後は、ワークショップも随時開催していく予定です。彫金や金工に興味があれば、SNSで告知していきますので、ぜひ体験しにいらしてください。陶芸教室はたくさんあるけど、彫金ってなかなか触れることがないと思うから、ワークショップを通じて体で理解しにきてくれると嬉しいなと思います。

また、羽の作品やジュエリーのオーダーもいつでもお待ちしています。

 

編集後記

仕事とプライベートをきっちり分けるようなライフスタイルではなく、日常の中に金属を彫る時間や波に乗る時間が溶け込んでいて、「なんか気がついたらこうなってたんだよね」と笑顔で話す秋濱さん。心地いい方へ、気持ちいい方へと直感を信じて歩まれてきたからこそ、人や仕事の縁を引き寄せているように感じました。

私も秋濱さんの羽のシルバーリングがお気に入りで、お守り代わりに毎日つけています。リングをつけた自分の手元を見ていると、羽の美しさに見惚れたり、軽やかな気持ちになったりします。一つ一つ表情の違う、自分だけの羽を見つけにいらっしゃってみませんか。

■お店の情報
akihama|秋濱 克大
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