松風トークVol.12|好きが繋がり、こだわりを届ける。松風町に生まれた和モダン古民家カフェ「茶室 雨ト音」

インタビュー

松風トークVol.12|好きが繋がり、こだわりを届ける。松風町に生まれた和モダン古民家カフェ「茶室 雨ト音」

2022.12.26

松風ストリートでお店を営んでいる人や、近辺の気になる方々にお話を聞いて記事にする『松風トーク』。

第12回のゲストは、今年 (執筆した2022年時点) オープンしたばかりの『茶室 雨ト音(以下、雨ト音)』を営む那須野浩美さんです。松風ストリートのメイン通りから脇道に入ったところに位置する雨ト音は、古民家を改装した居心地の良い空間が特徴的なお店。

インタビューを通して明らかになった那須野さんのキャリアや雨ト音以外の活動の数々。心地よい空間がどうして生まれているのか、そのお話から垣間見ることができました。

 

家への一目惚れから始まった雨ト音

ー本日はありがとうございます。オープン当初から編集部では「良い空間ができた!」とざわついていました。今日は那須野さんのキャリアも含めて、お話をお伺いできたらと思います。

ありがとうございます、よろしくお願いします。


ー突然素敵なお店ができたという印象だったのですが、どのような経緯でお店をオープンするに至ったのですか?

雨ト音は物件に一目惚れしたことをきっかけに始めたお店です。今、このお店以外にも東京の谷根千エリアに2店舗、ひとつは定食も出している和モダンカフェ、ひとつは雑貨屋さんを構えているのですが、それに続く3店舗目という形になりました。

もともと新店舗のために物件探しをしていたわけではなく、ずっと湘南で暮らしたいと思っていたので、数年前から住居用の物件を探していました。そんな中、出会ったのがこの建物だったんです。

ー住居用に探していたけれど、お店として活用することにしたんですね。

本当に素敵な建物だったので、住居にするのは勿体ないと思いました。この建物を色んな人に見てほしかったので、お店にしたほうが活きるかなと。他の店舗もそうなんですけど、私は古い建物が好きで、素敵な空間づくりがしたいということが先にあるんです。

その結果、カフェになったり雑貨屋さんになったりというだけで、この建物や空間を楽しんでいただきたいという思いが強くあります。

 

ーずっと居たくなる空間ですよね。那須野さんが特に気に入っているところはどのあたりですか?

どこも素敵なんですけど、部屋ごとに雰囲気が違うところも良いですし、大きな木枠の窓と高い天井に特に惹かれました。窓の開き方が、横にスライドするサッシとは異なり、外側に突き出すところや、枠の木材の感じも気に入っています。

ほとんど手を加える必要がなかった建物なのですが、信頼できる建築家の友人に、ライティング(照明)やレイアウトなどをみてもらい、お気に入りの空間に仕上げてもらいました。

 

谷根千エリアから続く「雨」の系譜

ーほかの2店舗も行ってみたくなります。

私が言うのもなんですが、ほかの店舗もすごく良い空間です。1店舗目は「雨音茶寮 (あまねさりょう)」というお店で、古民家を改装したカフェです。2店舗目は谷中銀座にあるお店。ジェラート屋さんと一緒にオープンした店舗で「糸雨雑貨店」という名前で営んでいます。

 

ー共通して「雨」という名前がついているのはどうしてですか?

もともと雨の音が好きなんです。最近のマンションは気密性が高く、雨の音って聞こえないじゃないですか。でも、古くからの建物は雨が降ると「ポツポツ」と音がして、すごく癒されます。

だから1店舗目から「雨」をいれたお店の名前をつけています。1店舗目は雨が降った日もとても良い雰囲気になります。

 

ーそして、3店舗目が「茶室 雨ト音」。

はい。雨ト音は紅茶をメインとしたお店なのですが、これは生い立ちにも由来していて。イギリスに住んでいたことがあるのですが、イギリスでは、紅茶とスコーン、クロテッドクリームとジャムをセットにした「クリームティ」というものを日常的に楽しみます。雨ト音では、そんな本場のクリームティも楽しんでいただけるお店にしました。

紅茶を扱うので、ティーハウスでもよかったのですが、和名にしたかったため「茶室」と名付けて。この建物は、音楽好き一家の邸宅だったので、「茶室 雨ト音」という名前にしました。

 

古い建物への興味が育まれたイギリス時代

ーイギリスにも住んでいらっしゃったんですね!いつごろ住んでたんですか?

中学高校時代はイギリスの寮制の学校に留学していました。その学校は、まるでハリーポッターの世界観さながらで。歴史ある古い建物から、新しいモダンな建物が混在していて、授業ごとに別の建物に移動するのがとても楽しかったんです。建築から何百年も経っている美しい建物が多くて。その影響は大きいと思います。

 

ーそれはすごい!中高をイギリスで過ごすって貴重な経験ですね。

そうですね。両親が英語教育に熱心だったので、兄も同様に留学していて、私もそれに便乗する形でした。

イギリスでは、アンティークの家具も大事にされているように、古いものを大切にする風習があるんです。パーツだけでも良いものは残して、少し維持費がかかってしまうとしても大事に活用します。今の日本の多くで行われている、建てては壊して、という価値観とは違うところがありました。その影響もあるでしょうね。

 

キャリアの始まりはホテル業

ー高校を卒業したあと、建物や空間に興味があったということは、建築学科などを出たんですか?

いや、そんなことはなくて。理系科目が苦手だったので、フランス文学科専攻でした(笑)

大学で日本に帰ってきたのですが、日本でのキャンパスライフも楽しかったですね。大学時代は楽しい時間を過ごして、卒業してからは接客業が性格的に向いていると思ったので、ホテルで働き始めました。

 

ーホテルではどんなキャリアを積んだのでしょうか

ホテルでは10年以上働いていました。その中で色々な経験をさせてもらって。接客業のキャリアとして目指す人が多いコンシェルジュとエグゼクティブフロアの責任者もさせていただきました。少し前にキムタクが主演をしていた映画(マスカレードホテル)で、長澤まさみさんが演じた役があるのですが、まさにその世界で。

海外での勤務など、一通りやりたいことを終えたタイミングで、年齢との兼ね合いもあって、転職することにしました。

 

やりたいことへの最短ルートを〜映画業界への転職〜

ー転職後はどういったことをされたんですか?

当時やりたいことがたくさんあったんです。それが実現できる職業を選んで、転職活動は6社受けたら、幸い、すべての会社さんから内定をいただきました。

新しくオープンするホテルのトレーニングマネージャーのお話もいただいて、大変迷ったのですが、条件が1番悪いながらも、当時最もやりたいことだった「映画の買い付け」が最短で実現できそうな映画業界のベンチャー企業に転職しました。

 

ーそのときからやりたいことを実現するために、積極的な選択肢を取ってたんですね。

そうかもしれません。このお店もそうなのですが、心がワクワクしたとき、ご縁と人に恵まれたときには、思い立ったらすぐに行動に移してしまいます。人との出会いもご縁ですし、建物との出会いもご縁あってのこと。

各店舗のスタッフとのご縁もおもしろくて、もともとお客さんだったメンバーが多いんです。お店のことが好きで働いてくれているので、関係も長く続いています。価値観の共有もできているのでお店の雰囲気も守られていますね。

 

ー素敵ですね。映画業界で働いたあとに、カフェの運営などを手がけていくことになるのですか?

いや、カフェの運営はまだその先で。友達のお父さんが某研究機関の役員で、国際会議もあることから、英語ができる人材を探していました。そこで私に白羽の矢が立ち、研究機関で働くことになりました。

 

ーなるほど、そして研究機関をやめて今に至ると。

実は、今でも研究機関で働いています。本当は1年だけ働く予定だったのですが、もうかれこれ10年以上やってます(笑)

 

カフェを手がける転機

ー本当に豊富な人生経験を積み重ねてますね。では、カフェはいつから?

数年前に父が亡くなったことがキッカケではじめました。父が小さな会社をやっていたので、その会社を継ぐことにしたんです。自分がやりたいことを考えた時に、ずっと好きだった空間に携わることがしたくて。

体力があるうちにということで、それを機に空間づくりをはじめました。仕事で根津に行くことはあったので、谷根千エリアが歩いていて楽しいエリアだということは知っていましたし、このエリアで素敵な物件と巡り会えたので、見た瞬間にいけると思いました。

当時は、フルタイムで勤めながら、夜はカフェに出て、土日もカフェで働くという日々がつづいてましたね。3年間くらい1日も休まず夜遅くまで働いていました。

 

ーよくそんな働き方を続けられますね…

無謀なんでしょうね。でも、楽しいから苦ではありません。辛いことももちろんありますが、それはそれでネタができたと思えば面白くなってきます。そして、自分を信じることを大事にしていますね。

たとえ根拠のない自信でも、自分の観点や感覚を信じることが一歩踏み出す力になるように思います。だから、雨ト音もこの空間を良いと思って来てくれる人がいると信じてますし、自分たちも中途半端なものは出さないことは徹底しています。

 

那須野さんのクオリティへの追求

ークリームティもいただきましたが、今まで食べたスコーンとは食感も風味も一味違いました。

ありがとうございます。スコーンもこだわりを持って、スタッフの中でも一番信頼できる料理上手がつくっていますし、添えているジャムも自分たちでつくった自家製のものです。ジャムがなくなれば、既製品を使うということは決してせず、販売終了にしています。

 

ーそのほかのこだわりはどんなものが?

エスプレッソも美味しい味が出せるよう、スタッフのイツキが、夫の友達のコーヒーショップオーナーにつきっきりで特訓してもらいました。深夜3時くらいまでやってた日もあったと思います。お客さまに提供するものは妥協したくないので、こだわりましたね。

ー深夜3時まで…すごいですね。

あともちろん空間へのこだわりはもちろん強くて、好きじゃないものが同じ空間にあることが許せないんです。だから、色があるキッチングッズも極力置きません。ゴム手袋って色がついたものが多いじゃないですか?それも私が嫌うことを知ってるので、スタッフが気を利かせてモノクロのゴム手袋をわざわざ買ってくれます(笑)

電化製品ひとつとっても、こだわりが強くて揃えるのが大変でした。

 

ー雨ト音では子供さんの入店はお断りしているということで、そのあたりも何かこだわりが?

そうですね。1店舗目の雨音茶寮は20~40代の女性によくご利用いただくのですが、その際に「癒されました」とか「ここに住みたいです」と言ってもらえることが多いんです。雑貨を販売していたり、大型ストーブがあって危険だということもあるのですが、「雨ト音」も静かでリラックスできる空間にしたいと思って、お子さんはお断りしています。

日ごろ、子育てに奮闘している女性の方にも、子どもから離れて、自分自身を大切にできるリラックス空間として使っていただきたいです。

 

松風町への印象

ー空間という話でいうと、この町全体の雰囲気は那須野さんから見てどんな印象なんですか?

町にきた時から開放感が印象的でした。静かでゆったりしてて、それでいて開けた感じが魅力的でしたね。道路も広いし、気持ちいい風が吹き抜けていました。

海よりも山派なのですが、松風町は空気感がゆったりしていて良いなあと思いましたね。

 

ー1,2店舗目がある谷根千エリアとの違いはありますか?

そうですね、谷根千エリアはコンパクトに小さいながらも個性的なお店がぎゅっと詰まってます。その点、松風町はゆったりとしていて、空も広いですよね。それが独特の開放感を生み出しているのかなとも思います。

隠れ家感のある立地ではありますが、色んな方に来ていただきたいです。

 

編集後記

日本縦断中で平塚をしばらく離れていたこともあり、今回のインタビューで初めて訪れることになった茶室 雨ト音。カフェが好きで色々な空間に足を運んでいますが、お気に入りのひとつとして雨ト音は今後も通いたいと思います。

平塚に住んでいた時にこのお店があれば、週に2,3度は利用しそうな隠れ家カフェ。引っ越す前にできてほしかったと思うと同時に、松風町の魅力がさらに増したことに嬉しさを覚えました。

お店が醸し出すやわらかな雰囲気は、心を溶かして、日々の忙しさを忘れさせてくれるやさしさが漂っています。ひとりで落ち着く時間を過ごしたい時に、ぜひ茶室 雨ト音に行ってみてはいかがでしょうか。

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