松風トークvol.8 「常に自分を良い状態に」 〜Kazuya Fujisaku 藤咲和也さん〜

インタビュー

松風トークvol.8 「常に自分を良い状態に」 〜Kazuya Fujisaku 藤咲和也さん〜

2022.08.30

松風ストリートでお店を営んでいる人や、近辺の気になる方々にお話を聞いて記事にする企画、『松風トーク』。

第8回のゲストは、レザー(革)作家の藤咲 和也(ふじさく かずや)さん。
藤咲さんのブランド「Kazuya Fujisaku」は、レザーのバッグを中心に、財布や名刺入れ、小物、アート作品などを販売しています。
シンプルでありながらも上質で遊びのきいたアイテムで人気を博しています。

松風ストリート編集部とも親交が深い藤咲さんのアトリエに伺って、お仕事や人生の話を伺ってきました。

-藤咲さんは小さいころからもの作りがお好きだったんですか?
記憶を遡っていくと、最初にもの作りや革製品を好きになったきっかけは、小学生の時にやっていたソフトボールかもしれません。

ある日、コーチが全員のグローブにオイルを塗ってくれた時があって。
それがめちゃくちゃ記憶に残っています。

その後、自分でもオイルを塗って手入れをしていくようになって。
自分で大切なモノをケアして好きな形を作る楽しさを、グローブを通じて感じるようになったと思います。

あとは、母親の影響もあるかもしれません。
母親は木材で作品をつくってはよくバザーで売っていて。

ある時、小学校の夏休みの課題で、「木工作品をつくりなさい」というのが出た時に、母親が流木でエビを作ってくれたんです。

-エビってあの海老ですか?
そう、海老です(笑)

その当時、僕はプラモデルをよくやっていたんですが、プラモデルよりもそのエビが自分にとってはすごくかっこいいものに見えて。

そこが、既製品にはない手作りの作品の持つ独特の良さを感じた瞬間だったように思います。

-作家として活動するきっかけはどんなものだったのでしょうか?
友人がレザーの財布を作っていたことですかね。

昔からレザーのものが好きで、特に買う予定がなくても色々なものを見ていました。
ある時に友人が自分でレザーの財布を作っているのを見て、「買うんじゃなくて作っちゃうの!?」って。かなり衝撃で。
そしたら、友人が「お前もやってみたら?」と。

最初はデニムでポーチを作って、その後レザーで財布を作って、徐々にバッグも作るようになっていきました。

-お母さんや友人にインスパイアされてきたんですね。それからどうなっていくのでしょう?
友人に向けてバッグを作り、プレゼントしました。

それが人生で2つ目のぼくが作ったバッグで。
作ることがとにかく楽しくて、友達もとても喜んでくれて。

自分が楽しく製作して、相手も喜んでくれるということがめちゃくちゃ幸せに思えました。

-素敵な循環ですね。
それで、その様子をFacebookにあげたら、また違う友達から制作依頼が来て。

最初は材料費だけもらって作っていたんだけど、「これをタダでもらうのは悪いよ」と、次第にお金をくれる人が出てきたりして。

そんなことを続けているうちに本格的に仕事にしていこうと思うようになりました。

-仕事にしていくにあたって、行動や気持ちに変化はありましたか?
まずは5万円でオーダーを受けることを目標にしたのですが、なかなか達成できない日々が続き、葛藤することもありました。

ただ、もともと好きなことだったのでその葛藤も含めて楽しかったですね。
苦しいことよりも楽しさが勝る感じというか。

-なるほど。
そして、やっとの想いで5万円のオーダーをいただいた時はすごく嬉しかったのと同時に、今までと少し次元が違うお金な気がしました。

「相手に本当に良いものを贈りたい」という気持ちにプラスして、自分も全力で楽しんで製作できたし、未来へ繋がる気がしたというか。
値段以上にすごく価値があるお金だと感じましたね。

納品して、お金をいただいた時の感覚は今でも鮮明に覚えています。

-平塚での作家活動を始めた経緯をお伺いしてもいいでしょうか?
彫金作家の秋濱さん(秋濱さんは松風ストリート第6回の記事参照)にアトリエをシェアしないかと誘っていただいたのがきっかけです。2014年のことですね。

当時、僕は埼玉に住んでいたのですが、海沿いで暮らすことに憧れていたので願ってもない話でした。

-ひょんなきっかけで憧れの暮らしに繋がったんですね。このあたりでの生活はお好きですか?
僕にとっては海が近くにあることが特に良いですね。
生まれが茨城の田舎で川遊びをずっとしていたせいか、
水の近くにいると調子が良くなるタイプなんです。(笑)

あとは駅から海へ続く一本道が好きです。

初めて平塚に来た時、駅から真っ直ぐ歩くと当時の秋濱さんのアトリエがあって、
その窓から秋濱さんが手を振って迎えてくれて、その先には海があって。

その時の印象や光景がすごく残ってますし、
その中に自分がいるということがいまだに良いなと感じますね。

-なにか普段の生活で心がけていることがあれば教えてください。
この空間(アトリエ)をワクワクしたもので満たすことですかね。

自分が楽しいと感じる空間をつくることは精神的に自分が満たされることに繋がり、
人生にも良い影響があると思っています。

-どういった影響があるのか、もう少し詳しく伺ってもよいでしょうか?
そうですね…少し大袈裟かもしれませんが、全てうまくいくのかなと思ってます。

常に自分を良い状態に保つことで、
自然とイメージが湧き出て作品が素敵になったり、
人とも良い関係で繋がれたり。

そのために、自分の状態を保つ一つの手段として、長い時間を過ごす空間には本当に良いと思うものを置くようにし、こまめに整理整頓することを心がけていますね。

-さいごに、今後の展望などがあれば教えてください。
今後はひとりじゃなくてチームで動いていきたいと思ってます。

ありがたいことに最近はとても沢山オーダーを頂いて、なかなか自分だけではやりきれなくなってきていて。
今は製作を手伝ってくれる方が一人いるのですが、一緒に制作をする時間がすごく楽しいです。

やっぱり単純に人と何かをすることが好きなので、仕事でもそれを求めていこうと思っていますね。

インタビュー編集後記。

楽しいから、好きだから、大変なことも含めて楽しんでやる。
シンプルな動機を貫いていくために、常に自分を良い状態へ意図的に導いていく。

そんなシンプルで力強くもどこか繊細さを持つ藤咲さんのお話を聞いて、
自分は日々の生活のなかで、どれくらい自分を思いやることができているかと考えました。

忙しくて余裕がない時、つい部屋が乱れてしまったり、食事が雑になってしまったり。
むしろ今は、生活の乱れが精神的な余裕のなさを加速させることに繋がっていくのかな、なんて思えたりもします。

すぐに大きな変化はできなくても、
整理整頓や、身体が喜ぶ食事をすること、花を飾ってみたり、お香を焚いてみたり。
そういった小さな自分への思いやりを生活の中に少しずつ取り入れていこうと思います。

お話を聞かせてくれた藤咲さん、ありがとうございました。

 

■Kazuya Fujisakuさんの情報
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